-知的資産を「棚卸し→整理→見せる」で回す「90日サイクル」-
「うちの技術なら、もっと高く売れていいはずなのに、最後はいつも価格競争になる」
「ベテランの勘に頼り切りで、若手が育つまで時間がかかりすぎる」
「銀行に強みを説明しても、なかなか伝わらない」
製造業の経営者が抱えるこうした悩みは、技術がないことが原因とは限りません。多くの場合、現場に必ず存在する「会社を強くしている何か」を、経営の武器として運用できていないことが一因です。
熟練者の段取り、トラブルを未然に防ぐ勘所、見積時の絶妙な判断。これらは、会社を強くする目に見えない「知的資産」です。
この知的資産を、単なる「整理整頓」で終わらせず、受注・採用・信用に結びつけるには、「棚卸し→整理→見せる」を約90日(四半期)で回すのが最も現実的です。
1. 棚卸し:立派な資料はいらない。「困った時」にこそ宝がある
「知的資産の棚卸し」と言っても、全業務を洗い出す必要はありません。
むしろ起点として有効なのは、現場が「例外対応」を迫られた場面です。そこに会社固有の勝ち筋が出ます。
狙い目は、「例外的な難案件」をどう切り抜けたか。
- 他社との競争となった最近の案件で、なぜ最後に勝ち切れたのか?
- 不良を出さないために、どこで「先回りの手当て」をしたのか?
- 見積時に必ず確認する「落とし穴(注意点)」は何か?
まずはヒアリングで、箇条書きのメモを集めるだけで十分です。
ポイントは「収集の継続」。報告書の完成度ではありません。
棚卸しメモは、次の型にすると後工程が一気に楽になります。
- 状況(案件・条件)
- 困りごと(何が難しいか)
- 手当て(何を工夫したか)
- 結果(何が改善したか)
- 条件(どこまで再現できるか)
2. 整理:自慢話ではなく、相手の「不安」を消す言葉へ
集めたメモは、そのままでは外に伝わりません。
大事なのは、強みを主張することではなく、相手が抱える不安を消す説明に翻訳することです。
たとえば「高精度加工が売りです」だけでは、相手は安心しません。
つぎのように言えると、価格以外の価値が立ちます。
「温度変化や歪みが出やすいこの形状では、当社は〇〇の手当てをするので、狙い通りの寸法が出せます。条件は△△です」
整理は、次の3点に絞れば十分です。
- 誰に(ターゲット・用途・工程)
- 何の価値(短納期/安定品質/歩留まり/提案力 等)
- ほかとの差は何か(何が効いていて、どこまで再現できるか)
ここまで具体化して初めて、客先は「この会社なら安心だ」と判断できます。
この価値の根拠が、最強の営業資料になります。
3. 見せる:営業・採用・銀行へ「用途別」に出し分ける
整理した知的資産は、相手に合わせて見せ方を変えると一気に成果に直結します。
営業で見せる(受注する)
会社案内だけでは、どうしても比較軸が価格に寄ります。
過去の課題をどう工夫して解決したか、その「再現性」を見せてください。すると相見積もりに巻き込まれにくい「選ばれる理由」が作れます。
採用で見せる(選ばれる会社になる)
求人票の「待遇」だけで勝負するのは限界があります。
代わりに、現場の判断基準やコツを言語化した資料を、会社見学や面接で提示します。 「うちはベテランの勘を『見える化』しているので、未経験でも早く成長できる」という根拠を示すことで、成長意欲の高い人材に選ばれるようになります
信用で見せる(取引先・銀行に効く)
強みの羅列ではなく、「リスクを潰す仕組み」として語ります。
品質を安定させ、技能を承継する運用サイクルがあると示せれば、将来の継続性が伝わりやすくなります。
4. 運用:コツは「全部やらない」。四半期で3つに絞る
「そんなに多くのことはできない」-その通りです。
運用のコツは、「今期はこれを磨く」と3つ程度に絞ること。絞るから回り、回るから効きます。
現場の更新スピードに合わせ、約90日(四半期)で回すのが最も現実的です。
- 1〜4週目:現場から「例外メモ」を10〜30個拾う(週1回でもよい)
- 5〜8週目:刺さりそうな3つだけを、営業・採用・信用のいずれかに反映する
- 9〜12週目:相手の反応を確認し、次の武器を選ぶ(当たり/外れを学習する)
運用は、重くしないことが最大の成功要因です。
例えば「月1回30分の棚卸し」「四半期末に60分で整理と出し分け」程度でも、十分に回り始めます。
まとめ:最初の一歩は「最近の難案件」から
知的資産は、持っているだけでは会社の体力になりません。
拾い、翻訳し、用途別に見せる。このサイクルを回し始めた企業から、静かに、しかし確実に強くなっていきます。
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