「改善が続かない…」というもどかしさ
「改善活動をやってみても、しばらくすると元に戻ってしまう」。
せっかく時間や労力をかけて取り組んだのに、数か月後には以前のやり方に逆戻りしてしまう。多くの中小製造業の経営者が抱える「もどかしさ」です。
大企業のように専任の改善担当者を置けない中小企業にとって、改善が「一過性のイベント」で終わるのは、単なる時間の無駄ではありません。現場メンバーの貴重な努力を水泡に帰すことでもあります。
改善を「イベント」から「文化」に変える鍵は、仕組み化にあります。
改善が続かない会社の共通点
なぜ改善が定着しないのか。その背景には、共通する要因があります。
- 人に依存している
改善が担当者任せになっており、人の記憶や意識に頼っている。そのため担当者が異動したり忙しくなったりすれば、すぐに消えてしまう。 - 日常業務に組み込まれていない
せっかく良い改善策が生まれても、日報やチェックリストなどの業務プロセスに落とし込む工夫がない。
つまり、改善が続かないのは「取り組みの質」ではなく、それを支える仕組み化の不足に原因があるのです。
仕組みに残す工夫の事例
ある部品メーカーでは、作業改善をしてもすぐに元に戻ってしまう課題を抱えていました。特に、ベテランの感覚に頼る部分が多く、新人や応援の作業者がミスを繰り返す問題がありました。
そこで同社が取り入れた工夫は次のとおりです。
- 手順の見える化
改善後の標準作業手順を写真入りで作成し、現場に掲示。誰でも迷わず作業できる状態に。 - 意識づけと共有の習慣化
日報に「今日の作業で工夫したこと」を必ず記入する欄を設け、改善を日常の習慣に。
その結果、改善が形として現場に残るだけでなく、社員同士が工夫を共有する文化が生まれました。改善は「頑張ってやるもの」から「自然に積み重なるもの」へと変化したのです。
改善を持続させる3つの視点
改善を「仕組み」に残すには、次の3つの視点が有効です。
- 見える化する
改善内容を写真や図で共有し、誰でもすぐ分かる形にする。 - 業務に組み込む
チェックリストや日報など、日常業務に改善を反映させる。 - 小さな仕組みから始める
大掛かりなシステムではなく、簡単に続けられる仕組みから導入する。
明日からできる最初の一歩
改善を「やりっぱなし」にしないために、まずは小さな一歩を始めてみましょう。
- 今日実施した改善を A4用紙1枚で簡単に記録 する
- 作業現場に ビフォー・アフターの写真を掲示 する
- 朝礼や会議で 「最近の改善事例」を1つ紹介 する
こうした工夫を積み重ねるだけで、改善は「点(一過性の活動)」から「線(仕組み)」へと変わり、持続する文化へと育っていきます。