
社員が動かない「もどかしさ」
「社員が指示待ちで、なかなか主体的に動かない」
「何度言っても、言われたことしかやらない」
そんなもどかしさを感じることはありませんか。現場には手を動かす人がいても、考える人が経営者ひとりに偏ってしまうと、会社はなかなか前に進みません。
なぜ社員は自分から動かないのか。
背景には「会社の目標が自分ごとになっていない」「責任の所在が曖昧」といった要因があります。社員の意識を変えるには、経営者の問いかけが大きな力を発揮します。
主体性を引き出す3つの問いかけ
問いかけ①:「この仕事の目的は何だろう?」
ただの作業ではなく、その仕事がどんな価値を生むのかを考えさせる問いです。
「この仕事が成功したら、お客様にどんな良いことがある?」と聞くだけでも、社員の視点は広がります。目的を理解すれば、工夫や改善のアイデアが自然と出てきます。
問いかけ②:「もし、あなたが社長だったらどうする?」
経営者の立場に立たせることで、社員は自分の役割を組織全体の中で捉え直します。
いきなり社長視点が難しければ「もしこのプロジェクトのリーダーだったら?」でも十分です。小さな枠組みでも「自分が決める立場ならどう動くか」を考える習慣が、当事者意識を育てます。
問いかけ③:「失敗から、次の一歩をどう活かす?
失敗を責めるのではなく、学びの場に変える問いです。
例えば「納期が遅れたのはなぜか?次に遅れないために何ができる?」と聞けば、原因追及ではなく前向きな改善の対話になります。失敗を恐れず挑戦できる文化を育むことにつながります。
問いかけが社員の行動と関係性を変える
ある部品メーカーの社長は、社員が「言われたことしかやらない」ことに悩んでいました。そこで毎朝の打合せで「この作業の目的は何だろう?」と聞くことを習慣にしたそうです。
最初は社員も戸惑いましたが、次第に「納期を守るためです」「お客様が使いやすい製品にするためです」と答えるようになりました。すると、単なる作業だった業務に「意味」が生まれ、社員から改善提案が出るようになったのです。
この変化は、単なる行動の変化にとどまりません。社員にとっては「自分の考えを言ってよい」という安心感につながり、社長にとっては「社員に任せられる」と実感できる瞬間でした。こうして、従来の「社長が指示し、社員が従う」関係から、「社長と社員が一緒に考える」関係へと一歩進んだのです。
問いかけを実践する際の注意点
問いかけは強力な手法ですが、いくつか注意点があります。
- 詰問にならないようにする
「なぜやらないんだ?」ではなく、「どうすればうまくいくと思う?」と前向きな形で問いかけることが大切です。 - 答えを急がせない
社員が考えをまとめるには時間がかかります。沈黙を恐れず、考える余白を与えることが効果的です。 - 否定せずに受け止める
たとえ答えが未熟でも、「なるほど、そういう視点もあるね」と受け止めることで、社員は安心して発言できます。 - 日常に組み込む
大げさな場面だけでなく、朝礼や打合せなど日常のやり取りの中で続けることがポイントです。
明日から実践できる一歩
問いかけは魔法の言葉ではありません。しかし、経営者が毎日少しずつ問いを投げかけることで、社員の意識は確実に変わっていきます。
ぜひ明日から「目的」「社長だったら」「失敗の次の一歩」という3つの問いを試してみてください。社員の中に「自分ごとで考える芽」が芽吹き始めるはずです。
そして、問いかけを続けることで「社員が主体的に動き出す」だけでなく、「社長と社員の関係性そのものが、共に考える信頼の関係へと変わっていく」ことを実感できるでしょう。