
「特許や商標を取ったけれど、営業で使えていない」
「特許を取ったけれど、営業では『出願済みです』と伝えるだけで終わってしまう」
「商標を登録したけれど、お客様には価値が伝わっていない」
こんな声を多く聞きます。
せっかく費用と時間をかけて取得した知財が、営業の武器になっていないのです。
なぜ営業に活きないのか?
特許や商標といった知財は、単なる『権利』ではなく、その会社の技術力や製品の品質を証明する裏付けになります。
特にB2Bの商談では、購買担当者が社内承認を得る際に「この会社は技術的に優れている」「品質管理がしっかりしている」と説明できる材料が必要です。
その証拠として使えるのが知財なのです。
にもかかわらず、多くの会社では営業に活かせていません。その理由は2つあります。
- 営業担当者が、知財を「信用の証」として活用できていない
「特許を持っています」「商標を登録しています」と事実だけを伝えて終わってしまい、 「それがなぜ安心につながるのか」を顧客に説明できていない。 - 顧客にとってのメリットが整理されていない
営業側が「特許があります」「商標を持っています」と伝えても、顧客から見れば「それで自社にどんな得があるのか」が分からない。
顧客の視点で意味づけがされていないため、知財が『安心材料』として伝わらず、価格以外の理由にならないのです。
知財ストーリーの作り方(B2B商談向け)
ステップ1:知財が示す「証明力」を整理する
まず、自社が持つ知財が「何を証明しているのか」を整理しましょう。
知財は単なる権利ではなく、自社の強みを裏付ける証拠になります。
- 特許は、「当社には、他社に真似できない独自の技術力がある」ことを証明します。
- 商標は、「品質や信頼のブランドを築いている」ことを示します。
- 意匠は、「製品の工夫や提案力を持っている」ことの証拠となります。
つまり、知財そのものが「この会社なら安心できる」という顧客へのメッセージになるのです。
ステップ2:顧客の社内承認プロセスを想定する
次に、その「証明力」が顧客の社内でどのように使われるのかを考えます。
B2Bの購買では、担当者が「なぜこの会社から買うのか」を上司や経営層に説明し、承認を得る必要があります。
- 特許なら、「この技術は特許で守られており、独自性と信頼性がある」と説明できます。
- 商標なら、「品質と信頼を示す登録ブランドであり、長期的に安心して取引できる」と説明できます。
- 意匠なら、「工夫や提案力があり、デザイン面でも付加価値を提供できる」と説明できます。
つまり、知財は顧客にとって「社内で承認を得やすくする根拠」になります。
この視点を持つことで、知財を営業の場でどう語るかがはっきり見えてきます。
ステップ3:商談トークに落とし込む
最後に、その「証明力」を商談の場でどのように伝えるかを整理します。
単なる機能説明にとどまらず、「特許や商標があるから、この製品は安心できる」というストーリーに変えることが大切です。
例:
- 「当社はこの構造で特許を取得しています。特許を取得できるほどの独自技術があるからこそ、この製品は精度と安定性を保証できます。御社にとっては、納期遅延や品質不安を減らせる安心材料になります。」
- 「この商標は、当社が長年培ってきた品質と信頼を示す登録ブランドです。この製品にその商標を付していること自体が、“信頼を損なわない製品”である証拠です。だからこそ、長期の取引でも安心して任せていただけます。」
特許製品を「安心材料」として活用した工作機械メーカー
ある工作機械メーカーは、独自のクランプ機構に関する特許を取得し、その技術を活かした新しい加工機を開発しました。
当初は商談で「この機構は特許です」とだけ説明していましたが、顧客には十分に伝わりませんでした。
そこで営業トークを次のように見直しました。
「当社は、このクランプ機構に関して特許を取得しています。
特許が認められたのは、他社にはない独自の発想と技術力が公的に証明されたからです。
この特許技術を組み込んだ新型加工機は、ワークの位置決めを一度で正確に行えるため、加工精度と作業効率を大幅に向上させます。
特許で裏付けられた当社独自の技術が搭載されているからこそ、御社の競争力を高めることができる製品です。」
この説明により、顧客は「ただの新製品」ではなく「特許で保証された独自技術を搭載した信頼性のある製品」と理解し、結果的に価格よりも安心感で選ばれる商談につながりました。
知財はB2B商談の「安心の証」
知財は『守るための権利』にとどまりません。
B2Bの商談においては、顧客が社内承認を得るための「安心の証」になります。
特許や商標を「顧客が社内で説明しやすい材料」に変換することで、
「価格」以外の理由で選ばれる会社になることができます。
次の商談では、ぜひ知財ストーリーを準備してみてください。