- 経営のモヤモヤは“つながりの見えなさ”にある -

「やるべきことは山ほどある」なのに、動けない理由
課題は山積み。人も足りない。売上も不安。
でも―なぜか手が止まる。
そんな“モヤモヤ”を感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。
「やる気がないわけじゃない。課題も分かっている。けど、どこから手をつけていいのか分からない」
-この状態、実は多くの中小企業で起きています。
一見、優先順位の問題や情報不足のように思えますが、この“分からなさ”の正体は、もっと根っこのところにあります。
それは、経営の「つながり(構造)」が見えていないことです。
“課題の山”ではなく、“構造の地図”を持つ
経営の現場では、さまざまな「症状」が起きています。
- 売上が思うように伸びない
- 現場が忙しいのに、利益が残らない
- 社員が自発的に動かない
- 会議はしているが、改善が進まない
このような状態で、目の前の課題に一つずつ対応していくと、かえって混乱することがあります。
なぜか?
それぞれの課題が、バラバラに見えて実は“つながっている”からです。
たとえば――
- 「営業方針があいまい」だから、現場が手間のかかる仕事ばかりを抱えてしまう
- 「部門間の情報共有が不十分」だから、社員が自分で判断できずに止まってしまう
- 「過去の設備投資が利益構造に合っていない」から、資金が思うように回らない
こうした因果関係が見えないままだと、「どこから手をつければいいのか?」という迷いから抜け出せなくなるのです。

事例:モヤモヤを“整理”したら、現場が変わった
以前、金属加工業の社長からこんな相談を受けました。
「やるべきことはたくさんあるんだけど、全部が後手に回っている。毎月、数字もどんどん悪くなってきていて…」
ヒアリングを重ねながら、会社の業務・収益・組織の流れを一枚の図に“見える化”したところ、こんな構造が浮かび上がってきました:
- 大口顧客の受注に生産が偏っており、実は採算がほとんど出ていなかった
- 利益の出る小ロット品の引き合いが来ていたが、納期に対応できず断っていた
- 営業担当は「件数」を重視しており、「粗利」や「段取り負荷」は見ていなかった
- 社内で価格改定の方針が共有されておらず、利益を削って受注している状況だった
この構造を社長と一緒に整理する中で、“たくさん受注して、現場は忙しいのに、利益が出ない”という矛盾が浮き彫りになりました。
つまり、儲からない案件にリソースが偏りすぎていたことが、全体の動きを止める“詰まり=ボトルネック”になっていたのです。
このことを認識できたことで、社長の表情が変わりました。
「なるほど。やることが多いんじゃなくて、“つながり”が見えていなかったんだ」
「何をやめて、どこに力を入れるかが、はっきりした」
その後、受注方針と営業評価の基準を見直し、数件の取引を整理しただけで、現場の負荷が軽くなり、利益率も安定して改善していきました。

「全体を整える」ことで、優先順位が見えてくる
「何から手をつけていいか分からない」-
この状態は、情報ややる気が足りないからではありません。
バラバラに見える課題の“つながり”が見えていないから、判断ができないのです。
課題は「多い」のではなく「絡み合っている」。
だからこそ、最初にやるべきことは「整理」です。
どの課題が、どの課題に影響しているのか、どこがボトルネックなのか
それが解消されると、何が連鎖的に良くなるのか
この「構造」を見えるようにすれば、自然と優先順位が決まってきます。手当たり次第に動くのではなく、「どこを変えれば全体が動くか」を見極められるようになるのです。
まとめ:「迷い」の原因は、判断軸の不在
経営の迷いは、“情報の量”ではなく、“構造の不在”が生む。
目の前に見える課題にひとつずつ反応するのではなく、「なぜそうなっているのか」「何がどうつながっているのか」という視点から全体を整理すること。それが、判断の軸を取り戻す一歩になります。
「何から手をつけていいか分からない」と感じたときこそ、“減らす”ための整理を始めてみてください。