-仕事が止まる原因は、「人」より「基準不在」-
「これ、進めていいですか?」
「念のため、社長に確認してからにします」
製造現場を回っていると、こうした【判断待ち】に出会います。納期が迫っているのに、機械が止まり、人の手も止まる。社長としては、つい「それくらい自分で考えて動いてほしい」と感じる場面もあるでしょう。
ただ、現場が止まる主因は、能力不足ややる気不足ではないことが多いです。
本当のボトルネックは、「どこまでなら自分の責任で決めてよいか」という境界線(基準)が見えないこと。基準がなければ、人は安全側に倒れて「止める/上にあげる」を選びます。その結果、判断が社長に集中し、社長の時間が奪われ、経営の意思決定スピードが鈍化します。
この記事では、判断待ちを減らすための「OK/NG基準」を、現実的に作って回す方法を整理します。
1. 判断が止まる「4大領域」
判断待ちは、だいたい次の4領域で起きます。ここから手を付けると効果が出やすいです。
(1) 品質:通す/手直し/作り直し
寸法がわずかに外れた、外観に微細なキズがある。基準が曖昧だと「いったん止めて上に聞く」が連鎖します。判断が遅れるほど手直しの余地が消え、段取りも崩れ、結果的に手戻りが拡大します。
(2) 納期:特急の割り込みを入れる/断る
営業が持ってきた短納期要望を、どこまで受けるか。優先順位の基準がないと、場当たり的な割り込みが常態化し、全体の生産性が崩れます。
(3) 投資:小口でも相談が発生する(工具・治具・測定器)
1万円の工具を買うのに、毎回ハンコが必要な状態では改善が進みません。ルールがないと議論が蒸し返され、判断コストが積み上がります。
(4) 例外対応:特別仕様・特別検査・材料代替など
追加要望(例外要求)はゼロにはできません。重要なのは「例外を扱う基準」と「誰が決めるか」が決まっていることです。これがないと、毎回【責任の所在】から始まり、現場が疲弊します。
2. 「全部社長」をやめる。役割ごとに「決めてよい範囲」を線引きする
OK/NG基準は、全員が同じ粒度で持つ必要はありません。むしろ、頻度が高い判断ほど現場側に寄せ、影響が大きい判断ほど上位に残すのが合理的です。
- 現場スタッフ:安全・品質の即時判断(例:この状態ならOK/この状態なら停止)
- 主任・班長:手直し可否、工程入替、外注利用などの調整判断
- 部長・工場長:採算・負荷・顧客影響を含む全体最適の判断
- 社長:取引条件の変更、高額投資、信用に関わる判断(経営の根幹)
この線引きが曖昧だと、現場が勝手に決めて後で手戻りが起きるか、細部まで社長判断になって組織が止まるか、どちらかに寄ります。
3. 機能する「OK/NG基準シート」3つの鉄則
立派なマニュアルは不要です。現場で迷いを減らす A4一枚 を作り、運用で育てます。
鉄則1:NGより先に【OKの範囲】を決める
多くの会社は「やってはいけないこと」だけを増やしがちです。現場が動くには「ここまでは任せる」というOKの範囲が必要です。
鉄則2:「なるべく」「丁寧に」を禁止する
形容詞で基準は運用できません。数字が理想。難しければ写真、良否サンプル、チェック項目で誰が見ても同じ判断になる状態を定義します。
鉄則3:上申(相談)時の持ち物を固定する
相談が遅い原因の半分は情報不足です。上にあげるなら、最低限、下記情報を揃えるルールにします。
- 現象:どこで、何が起きているか
- 影響:納期・数量・金額への影響
- 選択肢:A(手直し)/B(作り直し)/C(例外承認)など
- 推奨:現場としてはどれを推すか(理由も一言)
「報告+提案(選択肢・推奨)」にするだけで、社長の判断時間は大きく減ります。
4. 運用は「週15分」の更新で回せる
基準は作って終わりではありません。運用しながら微調整して精度を上げます。
- 週に一度、15分だけ時間を取る
- 今週「判断に迷って止まったケース」を1〜2件だけ選ぶ
- 「次から迷わない基準」を決め、シートを更新する
まとめ:社長の仕事は「決める」より「決められる状態を設計する」こと
判断待ちをなくすのは、気合や教育ではありません。
「ここまでなら任せる」という境界線(OK/NG基準)を、役割ごとに見える化し、運用で育てることです。
まずは、今週いちばん多く社長に上がってきた相談を1つ選んでください。
その相談を「現場で判断できるA4一枚」に落とし込む。そこから、社長の時間と、強い現場づくりが同時に進み始めます。
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