ー経営に活かす知財の視点 ー

出願はゴールではなくスタート
特許や商標の出願を終えたとき、
「これで安心だ」「まずは一区切り」と感じる経営者は少なくありません。
しかし、出願はあくまで「経営に活かすための準備」に過ぎません。
出願そのものが利益や受注を生み出すわけではなく、
それをどう活かすかが結果を分けます。
「出願して終わり」になってしまうパターン
中小製造業でよく見られるのは、こんなケースです。
- 特許を取ったが、営業資料にもWeサイトにも載せていない
- 商標登録をしたが、商品パッケージに表記していない
- 登録後に競合の動きを追わず、他社も同様の機能を出して自社の強みが目立たなくなった
- 社内でも知財の存在や価値を共有していない
これでは、せっかくの知財も「棚にしまったままの道具」になってしまいます。
経営に活かすための視点
知財を経営に活かすためには、次の3つの視点が欠かせません。
- 伝える
営業資料、提案書、展示会、Webサイトなどで、知財の存在を明示する。
「他社が真似できない理由」を具体的に説明できるようにする。 - 結びつける
知財を「技術力」だけでなく、「顧客への価値」や「ブランド」と結びつけて発信する。
例:ワークの位置決めを一度で正確に行える加工治具(特許出願中)を、「短納期・高精度加工を可能にする設計力と試作検証のノウハウ」として伝えることで、精密治具設計分野での技術ブランドを築く - 見直す
競合の製品や新技術の動きを定期的にチェックし、自社の知財がまだ強みとして機能しているかを確認する。
必要に応じて、
- 展開可能な新規分野を探す
- 新しい販売地域や顧客層を広げる
- 新サービスやオプションを加える
といった形で活用をする。
第三者からの模倣防止など製品を守るだけでなく、攻めの武器として活用する視点が大切です。

事例:出願から販路拡大につなげた金属加工会社
ある金属加工会社は、治具の改良発明で特許出願をしました。
特許出願後、営業資料を更新し、展示会で「作業時間短縮を実現する独自構造(特許出願中)」と明記。
さらに、改良治具の使用方法を動画で撮影し、Webサイトに掲載しました。
結果として、従来の取引先から注文してもらい、
新規の引き合いも展示会経由で増加。
「出願=安心」ではなく、「出願=販路拡大の武器」として活用した好例です。
チェックリスト:「出願して満足」になっていないか?
- 出願・登録後、その知財を顧客や市場にアピールしているか
- 営業担当や現場は、その知財の価値を理解しているか
- 競合のよる類似した技術開発を定期的に確認しているか
- その知財が自社の強みやブランドとつながっているか
この中で1つでも「NO」があれば、
知財を経営にうまく活用できていない可能性があります。

まとめ
出願はゴールではなく、経営に活かすためのスタートラインです。
守るだけでなく、「伝える」「結びつける」「見直す」に活用することで、
知財は営業の武器にも、ブランドの土台にもなります。
せっかく時間と費用をかけた出願。
棚に眠らせるのではなく、利益と信頼を生む資産として動かしましょう。