-同じ言葉で話していても、見ているものが違う-

「伝えたはずなのに、伝わっていない」と感じたことはありませんか?
「なぜ、こっちの意図が伝わらないんだ…」
「何度言っても“そうじゃない”やり方をされる」
現場とのやり取りで、そんなモヤモヤを感じたことはないでしょうか?
指示が悪いのか、受け手がズレているのか。
でも本当は、「言葉そのもの」は合っていても、「見ている前提」が食い違っていることが多いのです。
ズレの正体は、“背景の違い”にある
経営者が「コストを下げたい」と言えば、現場は「材料を安くする」や「作業時間を短縮する」と解釈するかもしれません。
しかし、経営者の意図は「製品構成を見直す」「不採算品を減らす」といった戦略的な話かもしれません。
つまり、同じ言葉でも、受け取る背景が違えばまったく別の行動につながるのです。
この“ズレ”は、個人の理解力ではなく、立場や視点の違いから生まれるもの。
だからこそ、「何度言っても伝わらない」と感じたときこそ、問いかけを変える必要があります。
事例:「品質向上」がすれ違っていた現場
ある機械加工会社で、「品質を上げよう」という方針が出されました。
ところが現場では、「検査を厳しくすればいい」と受け取り、出荷前の再検査が常態化。
一方、経営者は、「設計段階からバラツキを減らしたい」「工程内でミスをなくしたい」と考えていました。
つまり、“品質”という言葉の意味が、すれ違っていたのです。
そこで経営者が現場にこう問い直しました:
「どこで不良が出ているのか、原因をみんなで洗い出してみよう」
「“良い製品”って、お客様にとってはどういう状態かな?」
この問いかけによって、現場の意識は「検査を強化する」から「つくり方を見直す」へと切り替わり、
結果的に手戻りやクレームが減少していきました。

問いかけは、“見ている視点”を合わせる道具
伝わらないのは、「言葉が足りないから」ではありません。
“見ている風景”が違っているから、同じ言葉がすれ違うのです。
だからこそ、次のような問いかけが有効です:
「現場では、どう見えている?」
「それをやる理由って、どう感がえてる?」
「それが実現すると、誰が助かる?」
これらの問いは、“理解させるため”ではなく、“視点を揃えるため”の道具です。
問いが変われば、見えるものも、話せる内容も変わってきます。
まとめ:言葉が通じないときこそ、「問い」を見直す

「言っているのに伝わらない」は、“言い方”の前に“問い方”を変えてみる。
経営と現場のズレは、個人の能力差ではなく、「背景の違い」から生まれます。
その違いを埋めるのが、“問いかけ”という対話の起点です。
指示や方針が通じにくいと感じたときは、
まず相手の視点に立ち、「どんな世界が見えているか」を確かめてみてください。
そこから経営と現場の歩み寄りが始まります。