―「いい技術ですね」と言われて終わらせないために -

◆ 「営業が弱い」と感じている技術系の会社
「うちの技術は他社より優れている」
「でも、なぜか営業でうまく伝わらない」
「見積もりは出せるけど、値下げされて終わってしまう」
こんな悩みを抱える技術系中小製造業は、少なくありません。
営業力が弱いのではありません。
営業の“軸”となる材料が、整理されていないだけかもしれません。
その“軸”をつくるのが、実は知財戦略なのです。
◆ 営業の話は「論点ずらし」になりやすい
営業現場でよくあるのが、
「それって御社じゃないとできない理由は?」
「他社と比べて、どこが違うの?」
という問いに対して、うまく返せない状況です。
そこでつい、加工精度や納期、対応力を強調してしまいますが、
それは“競合も言えること”。
「その技術をなぜやっているのか」
「どんな価値を届けるための技術なのか」
これを言葉にできないと、価格競争に巻き込まれるだけです。

◆ 知財戦略とは、技術と市場をつなぐ「翻訳装置」
知財戦略というと、
「特許を取る」「商標を守る」という“防衛的”なイメージを持たれがちです。
でも、真の知財戦略は、「技術がもたらす価値」を明確にし、誰にどう届けるかを設計すること。
つまり、技術と市場をつなぐ“翻訳”の役割を果たします。
たとえば、ある加工技術を
医療分野では「滅菌性を高める」
自動車分野では「軽量化と剛性の両立」
OA機器では「静音性と耐久性のバランス」
と伝え方を変えることで、商談の幅が広がります。
これは、単なる“営業トーク”ではありません。
知財情報に基づいた戦略的なメッセージ設計なのです。

◆ 実例:知財を整理して「選ばれる理由」が明確に
ある部品メーカーでは、長年蓄積したノウハウが社内に点在しており、
営業資料も現場の説明も人によってバラバラでした。
そこで、
特許出願内容
社内技術資料
使用してきた素材やプロセスの工夫
を棚卸しし、「技術ストーリー」を再構成。
「うちは、この加工技術を、〇〇の用途に最適化するために10年磨いてきた」という一本筋の通った説明ができるようになり、提案型営業が増加、単価アップも実現しました。
◆ 「知財で売れる会社」に
中小企業が勘違いしやすいのが、
「特許を取れば売れるようになる」という発想です。
でも大事なのは、
知財を営業ツールとして“使いこなす”視点。
✅ 強みを論理的に語れる
✅ 他社との違いを明確に言語化できる
✅ 権利化で技術の信頼性を補強できる
こうした「営業に効く知財」こそが、これからの製造業には求められています。

◆ 最後に:営業を強くするのは、「言葉にする力」
営業資料の見直しでも、技術パンフレットでも、結局のところ「自社の強みを言葉にできるか」がすべてです。
そして、その言葉の根拠を与えてくれるのが、知財の整理です。
あなたの会社の技術が、なぜ存在しているのか。
誰のために、どんな未来をつくるのか。
これを一緒に言葉にできれば、営業はもっと力強くなります。